<海外転職経験者のリアル体験談>
海外転職からのキャリアの作り方 ◆vol.01
海外転職を叶えたとして、その経験が日本でのキャリアにどうつながっていくのだろう。帰国後のキャリアに対する不安も、求職者の皆さんから多く寄せられています。そこで、海外勤務経験を活かして日本で活躍するお二人に、自らの体験談を語っていただきました。
「vol.01」では海外転職のそもそものきっかけや職場・生活のリアルについて、「vol.02」では海外転職で得たもの、帰国後のキャリアについて、お二人の生の声をお届けします。
Sさん/34歳/現在の仕事:海外転職アドバイザー
大手人材サービス企業の中国法人に4年間勤務し、リーダーとして求人広告営業を推進。帰国後、海外で働きたい求職者の転職をサポートする。
Oさん/28歳/現在の仕事:インバウンドメディアの運営
ベトナムの日本人向けニュースメディアにて広告営業を担当し、営業マネージャー、取締役に昇格。帰国後、訪日観光客の集客に力を注ぐ。
海外で働く入口は、意外にも大きく開かれていた
――お二人が海外転職に踏み切ったきっかけから教えてください。
【S さん】私は大学卒業後、フリーターを経て2社に勤めましたが、海外志向は全く持っていませんでした。そんな私が遅咲きながら、26歳で初めて行った海外旅行でビビッと来たんです。行先は台湾で、勤めていた会社の社員旅行。見るものすべてが新鮮で、「海外って面白い!」と、海外の魅力に開眼したんです。
「海外で暮らし、働いてみたい」と一気に飛躍した私は、すぐに行動を起こしました。語学力も海外ビジネスの経験もなかった私ですが、転職サイトで海外勤務の求人を調べてみると、意外にも中華圏では語学も経験も不問にする企業が多く、自分にもチャンスがあることを知りました。
25歳で就職した私は、新卒で働き始めた人たちとはキャリアの面で遅れを取っていたので、どんなことにもチャレンジしてみようと、中国ですぐに働き始められる2社に応募。営業の仕事の合間にスカイプ面接を受けてました(笑)。結果、日系人材サービス会社が上海に構える中国法人へ転職することになりました。
【O さん】私は大学に入学する前、英語を学ぶために留学センターに通っていたのですが、周りはみんな海外志向が強く、その影響も大きかったと思います。大学2年のときには1年間休学し、東南アジアとヨーロッパを中心に合計35カ国を巡り歩きました。
テントを携えて見知らぬ地で夜を明かし、パンをかじりながらの貧乏旅行。実は、イギリスのドーバー海峡で入国の際に誤解があって、留置場に一時閉じ込められたことも。
でも、不安な気持ちよりも、留置場のビュッフェスタイルの食事が嬉しくて、ここぞとばかりに食べまくったことを覚えています(笑)。旅行を通じて、精神的なタフさが知らず知らずと強くなっていたのでしょうね。
その後、就職活動では日本の企業から内定をもらい、日本での就職を決めていました。しかし、取得単位が足りなくて卒業できず、内定が取り消し。意気消沈していた私に、ベトナムで働いていた留学センター時代の友人が、「ベトナムでファーストキャリアを始めたら?」と誘ってくれたんです。
もはや国境という概念も消え失せていた私は、面白そう! だと思い、早速ベトナム・ホーチミンを訪れ、日本人向けニュースメディアから内定を獲得。晴れて卒業後、即現地で働き始めました。
国民性が色濃く反映された職場環境
――海外現地ではどんな環境で仕事を任されましたか?
【S さん】私の仕事は、おもに中国に拠点を展開する日系企業への求人広告の提案営業です。営業チームのスタッフはみんな中国人でしたが、ほぼ全員が日本語を話せたので、語学の面では不安はありませんでした。
ただ、現地スタッフは勤務時間中にスマホで友人とチャットをしたり、動画を見たり、日本にはない“緩さ”があり、「これでいいの?」というカルチャーギャップも。でも、もちろんやるときにはしっかりと仕事に向きあってくれて、中国人は商売上手と言いますか、営業メンバーはみんな人脈づくりがとてもうまくて、営業先にスムーズに入り込み、リレーションを強めていくんです。そこはすごく勉強になりました。
【O さん】私が就職したニュースメディアは、ベトナムに住む日本人に向けて経済、社会、生活、観光、政治、エンタメなど、あらゆるジャンルのニュースを毎日配信し、私は広告営業として不動産、航空会社、家電メーカーなど、日本人向けサービス・商品を扱う様々な業界の企業へ提案を重ねていきました。
スタッフはほぼ全員がベトナム人で、ベトナムの国民性なのか、とても勤勉で真面目なスタッフが多かったですよ。職場にフルーツを持ってきてはみんなで切り分けて食べたり、職場の一体感もすごく強かったですね。
――海外現地ではどんな環境で仕事を任されましたか?
【S さん】1年目は当時のレートで月給12万円くらいだったので、日本で勤めていた頃に比べると大分減りました。ただ、それでも現地の人の新卒入社の初任給に比べると、3~4倍の額に相当しますので、現地での生活に困ることはなかったです。
1年目から実績をあげたことが認められ、2年目以降は大幅に昇給してくれたので、日本でもらっていた額にすぐに追いつくこともできました。だから、待遇面での不満はありませんでしたね。
【O さん】ベトナムでは、日本人駐在員は月給50~60万円、現地スタッフはUS$1500くらいが相場だといわれています。私は現地採用でしたので、入社当初の月給は少なめでしたが、営業成果に対して高率のインセンティブ給を付けてくれましたので、営業が軌道に乗り始めると月給40~50万円になることも珍しくありませんでした。
現地採用は給料が安いというイメージがありますが、企業によっては実績次第で日本よりも稼ぐことができますよ。
戸惑いはほとんどなく、現地での暮らしを満喫
――お二人とも海外で暮らすことも初めての経験。戸惑いや苦労はありましたか?
【S さん】それが割とすんなり馴染めたんですよね。むしろ日本よりもフィットした感じがします。中国人の大らかで細かいことを気にしない気質が、私の性に合っていたんだと思います。でも、環境面では戸惑いがありました。
ご存じのように、上海は大気汚染によるスモッグがひどくて、空気がいつも白くかすんでいるんです。中国人は慣れているのかマスクもせずに歩いていますが、私を含めて現地の日本人の大半はマスク姿。マスクを着けていれば日本人だなとわかるくらいでした。そこも慣れれば当たり前になっていきましたけどね。
【O さん】水道水が飲めないことに戸惑いがありましたが、それ以外はすこぶる快適でした。ホーチミンには日系の百貨店もありますので、生活用品にも困ることがなかったですね。住まいはむしろ日本よりもグレードアップし、洗濯や食器洗いなどを週6日代行してくれる家事サービスが付いて家賃は月US$500。日本では考えられない安さですよね。
――休みや残業の状況など、ワークライフバランスはどうでしたか?
【O さん】土日休みに加えて、ベトナムにも祝日があって、もちろん仕事は休み。1~2月の旧正月には10日間の連続休暇を取得できました。しかも、ベトナムには定時キッカリに仕事を終えて帰ることが当たり前で、残業はほとんどありませんでした。
勤務時間は8:00~17:30で、昼食後に昼寝する習慣があるので、昼休みはたっぷり1時間半。オンオフのメリハリがすこぶる良好で、自分の時間も満喫できましたよ。
【S さん】中国もベトナムと同様です。土日祝は休みで、国慶節と春節には大型連休を取ることができました。仕事の裁量を任され、自分のペースで進めていけたので、残業過多になることもなく、18時台に同僚と乾杯することもしょっちゅうでした。
日本で働いていたときには夜遅くまで残業することも珍しくなかったので、海外転職を機に生活リズムも良好に変えることができました。