【海外転職の手続き情報】意外と知らない海外転職時の住民票・年金・健康保険

海外転職の手続き情報

日本で働く人のうち、約9割が会社員です(2017年総務省統計局)。会社が給与から天引きしてくれるため、年金や健康保険などの手続きを会社に任せっぱなしのビジネスパーソンが多いようですが、退職して海外転職となると話は別。

年金や保険など加入、非加入は自己責任になってきます。各制度の概要を押さえ、スマートに対応したいですね。

住民票は残す? 残さない?

●住民登録制度について
道路の舗装から災害時の公的支援まで、行政によるサービスが住民の生活を支えています。これらのサービスを受けられる人は誰かを把握するのが住民登録。1年以上日本を離れる人は、地域の自治体に転出の届出(=住民票を抜く)をするのが原則です。

●住民税
住民税は、毎年1月1日の時点で住民登録のある自治体で課税されますので、前年の12月中に海外に転出すると非課税となります。

●手続き
地元の区役所などの窓口で、海外転出の届出をします。原則として出国の14日前からですが、自治体により1カ月前から受け付けるところもあります。

●必要なもの
パスポート、運転免許証などの本人確認書類と認印があれば、届出は完了します。転出先の住所などは分かる範囲でよく、後に行き先が変わっても問題ないそうです。自治体のホームページにはマイナンバーカードや通知カード、国保(国民健康保険)の保険証も記載されていますが、なくても手続は可能です。

▼注意点
届出を忘れてしまっても、一時帰国時などにパスポートの出入国スタンプやeチケットを提示して転出の事実が確認できれば、さかのぼって転出できます。また自治体により、海外から郵送での届出に対応してくれるところもあるそうです。

住民票を抜いた後は、国内にいても転出日を過ぎると非居住者とみなされます。国民保険や印鑑証明などのサービスは受けられないため、ご注意ください。

行き先国で日本大使館などに在留を届け出ておくと、事故や災害のときに安否確認をしてもらえます。3カ月以上滞在する人には在留届の提出は義務ですし、外務省のオンライン(https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet/index.html)でも提出できますので、出しておく方が安心ですね。

厚生年金から国民年金へ、加入は任意!

会社員の方が退職すると厚生年金の加入がなくなるため、しばらく日本にいる場合は国民年金(以下、年金)に切り替える必要があります。一方、海外居住者は年金支払いの義務がないので、海外転職する人には年金をやめる選択もあります。

年金をやめる一番のメリットは、年額196,080円(2018年度)の負担がなくなることでしょう。一方、老後に年金をもらうつもりの人は、支払をストップした期間分、将来の支給額が減ってしまうことがデメリットです。

「もらう年金が減るのはイヤ!」という方のために、任意で支払いを継続することもできます。

●年金をやめる手続
住民票転出の届出が完了すると、次に年金の窓口に案内されます。同日に手続きするなら、特に必要なものはありません。

●年金を継続する手続
住民票転出の届出の完了後、年金の窓口で行います。海外転出中の支払方法として、口座引き落としかクレジットカードのいずれかを選びます。「ねんきんお知らせ便」などの郵送先(実家や友人宅などどこでも可)も指定してください。

●継続に必要なもの
念のための認印と、年金手帳もあればベストですが、なくても基礎年金番号が確認できれば手続きできます。

▼注意点
会社を退職して同じ月内に厚生年金から国民年金に加入した人は、年金の二重払いにご注意ください。国民年金を払ったのに最後の給与明細で厚生年金も天引きされていたという場合は、会社に相談して返してもらいましょう。

日本と「社会保障協定」を結んでいる国で働く場合は、年金加入期間の通算ができることがあります。国によって制度が違うので、各自で確認してください。

日本の国保(国民健康保険)はどうする?

会社に勤務する人は社会保険に加入しています。退職後もしばらく日本にいる場合、この間の病気やケガが心配な方もいらっしゃると思います。一時的に国保へ加入するか、社会保険を任意継続できる(協会けんぽ)こともあります。

国保と社会保険とで、かかる保険料を比較して決めても良いでしょう。国保の保険料は住所地や年収、家族の有無に応じて異なります。

●国保の加入手続き
協会けんぽを継続する場合は、退職する会社で手続きしてもらいましょう。国保の加入は、社会保険の資格喪失証明書と、マイナンバー(通知)カード、パスポートなどの本人確認書類を持参し、住所地のある区役所の窓口で手続きします。

住民登録の転出が完了すると、国保の窓口に行くよう案内されます。同日に手続きするなら、特に必要なものはありません。

●海外療養費
海外でケガや病気の治療にかかった費用を、後で補填してもらえる制度(海外療養費)がありますが、この海外療養費は突発的な病気やケガが対象で、短期の渡航を想定しています。また日本の保険制度内の治療を対象としているため、行き先国によっては希望通りに補填されない可能性があります。

移住後は生活環境が変わり、何が起きるかわかりません。医療保険、傷害保険については行き先国に対応している保険に自分で加入するか、雇用会社で現地の保険に加入してもらう方が良いでしょう。クレジットカードについている海外旅行保険は、観光など短期の渡航が対象で、就労ビザをもって居住している人は対象外とされることもありますので、事前に確認しましょう。

▼注意点
保険料は月単位で計算するため、月の途中で退職すると日割り計算してくれません。社会保険から国保へ変わる方は、最後の給与明細の保険料が二重払いになっていないか、職場の担当部署に確認しましょう。

忘れないで! 運転免許証の期限

海外転出時に忘れがちなのが運転免許証(以下、免許証)の手続きです。免許証が失効してしまうと、帰国時に運転できないだけでなくIDとしても使えなくなり、運転試験センターでとり直す手間もかかります。

一番のおすすめは、出国前または一時帰国の際に、特例制度を利用して期限前に更新しておくことです。パスポートの出入国記録で海外在住を証明できれば、各地の試験センターで手続きができて、新しい免許証は即日交付されます。

ちなみに免許証と住民登録は紐付いていません。住民票を抜いても更新のお知らせハガキは発送されるので、実家などへ郵便の転送手続きもしておきましょう。

選択は人それぞれ。自分でしっかり考えて決めましょう

「海外転職時の各種手続きをどうするか?」のメリット・デメリットは一概には言えず、ケースバイケースです。住民票を抜くと年金や保険に連動して非加入になるので、手続きのタイミングも検討しましょう。

これまで自分で考える必要のなかったことも、こまごまとした決断をしなくてはなりませんが、海外生活は日本の公的サービスの手厚さを知る良い機会でもあります。日本と同様にはいきませんが、行き先国で受けられる支援を押さえ、安心安全にご活躍いただきたいです。

※2018年11月現在

この記事を書いた人
横山美佐子
横山美佐子(横浜中央合同横山美佐子事務所)
海外進出・外国人材・薬事申請を主軸に活動、駐在員や外国人社員の就労ビザ申請を得意とする。自らもマレーシアで駐在経験があり、「個人が活躍する時代」に役立つ情報やサポートを提供している。

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